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――モデルからカメラマンになる転機、これでやっていけると思ったきっかけを教えてください。

安珠 モデルをしてすぐ、一眼レフ買いました。日記みたいに撮っていたんです。最初は職業にしようなんて思わなかったんです。

――でも、モデルだったら有名カメラマンと知り合って、技術を見て盗めるわけですよね?

安珠 あ、それはもう、役得ですね。ただ、誰かの真似じゃだめなんです。だからテクニカルな部分だけ、質問するくらいで後は、実践あるのみでした。その人しか撮れない写真ってあると思うんです。そういう写真に興味があるし。つまりは、その人が育ってきた環境だったりするんでしょうけど。例えばH.ニュートンがスノッブでSMチックな写真を撮っているけれど、日本の畳で過ごしてきた人にはあぁは撮れないと思う。それはやはり、ニュートンを取り巻いていた環境がそういう写真を撮らせたんだと思うんです。かっこ悪く言うと「オリジナリティ」ですね。「他の誰もが撮れない自分だけの写真」にすごく惹かれます。

――モデルならスカウトされるけど、カメラマンは自分でなるしかない職業ですよね?

安珠 夢中で撮っていました。それを見ていてくださったデザイナーの中野裕道さんが「うちのコレクション撮ってみないか」と、声かけてくださったんです。それでポスターとポストカードを撮りました。それがお金をもらった最初の仕事です。

――初仕事がヒロミチ・ナカノのコレクションって、すごいデビュー。

安珠 それが面白いんですけど「好きに撮っていいよ」って言ってくださって。そのコレクションのテーマが「不思議の国のアリス」だったんですよ。それで当時10歳だった高橋かおりさんを自分で連絡とって連れてきたんです。そう、ファッションショーのポスターなのに自分で衣装まで作った(笑)。85年だったかな。

――自分が写真家になるにあたって、撮るべきテーマは決まっていたんですか?

安珠 自分が写真家でいく、と思ったときにはもうなっちゃってました。テーマというか撮りたい物語りがあって、それが「少女の行方」という作品です。

――そのときは元・モデルの安珠ですって連絡したの?

安珠 いえ、まだモデル。帰国したのが88年でしたから。

――それでよく(高橋さんの)事務所がオッケーしたもんですね?

安珠 はい。ここで私がすごく言いたいのはですね、自分が作る物がすごく良いモノだと思わないと人も説得できないし、作れないということです。不安なんて何もなかったですね。それに全身全霊で関わる。無知というか、ステキな作品を作ろうとして難関を突破してきたんです(笑)。

――でも、スポンサーいなければ出版も出来ないわけだし……どうクリアしてきたんですか?

安珠 ちょっと、話戻しますね。高橋かおりさんを空き地でアリスのように撮っている。そのうち、10歳ということもあって、大病したときの自分と重なって見えてきて。写真機は鏡だというけれど、まさにそう。幼い頃の自分との対話になってきたんですよ。そこでハっと気がつく。目の前にいる少女は、今を精一杯生きている少女だと。それを確認できたときに、自分も今を充分に生きていると実感したんです。生きる意味なんて、これから知るものだと。写真ってすごいなぁって思える瞬間でした。これしかできないって思いましたね。それで出来たのが「少女の行方」で、私の臨死体験から始まる、私にしか作れない本になりました。そこからカメラマンとしてスタートしたと思います。つまりカメラマンを職業に、というより「これを撮りたい」と撮り続けていたらなってしまった、というのが正しいですね。

――カメラマン宣言とかしたんですか?

安珠 パリに帰ってすぐ「カメラマンになる!」と(笑)。でも大きい仕事の契約とかあって……。モデルやりながらカメラマンもできるって言われたんですけど、性格的に切り替えがちゃんと着かないと先に進めないんですね。それで如除にモデルをフェードアウトしていって、88年にやっと解放された。

――本になったのは「少女の行方」が最初?

安珠 いえ、「サーカスの少年」が先。そのすぐ後本になったんですが、やはり「少女の行方」は時間がかかりましたね。

――なんかイメージ違う。

安珠 え? どこがですか?

――一流モデルからカメラマンに華麗なる転身、みたいな感じがしてました。

安珠 ありがちな(笑)。でも、私の作品はファッション的なものじゃないし、テイストからうける印象は、モデルの要素はあまりないかもしれませんけど。

――日本に帰ってきたときはカメラマンとしてやっていく具体的なプランがたっていたんですか?

安珠 いいえ。父の危篤が帰るきっかけでしたから、プランも何もなかったです。

――パリで活動してたほうがよかったんじゃないかと思いますが。

安珠 そうですね。日本に帰ってきた頃の仕事はやはりきつかったです。物事をストレートに言うフランスに慣れていましたから。

――ストレートっていうか、体育会系っぽいですよね、安珠さんは。

安珠 やはりペースを作る立場ですし、大勢で仕事してると先に進めないといけないので、そういう面はあるでしょうね。でも基本は虚弱体質の文学少女ですから。……少女じゃないか(笑)。

――仕切りますよね。

安珠 トミーさんが仕切ってくれればいいんですよ(笑)。でも、撮影のコンテも自分のアイデアだし、それは仕方ないでしょう。 誰かのイメージで撮るわけじゃないから、当然仕切りますよ。

――作品作るときはそうでしょうけど、例えば雑誌の編集者の意見はどうなるんですか?

安珠 編集者の方は、よく出来た奥さん、器の大きい旦那さんみたいなもので(笑)、私に発注してくれた時点で、嬉しいことに「誌面の折り合いよりもいいページを」と言ってくれます。逆に何回か付き合ううちにこなれてきて、相手の要求に変に応えようとするより、常にいい意味で裏切らないといけないと思ってます。想像する写真より、いいものを、とね。


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